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みせてあげる by あかいかわ

作:あかいかわ
分量:13枚  使用お題:帰省ラッシュ、蝉時雨を聞く、蚊取り線香、ゲリラ豪雨、暑さを凌ぐ、海底、溺死者、日焼け止めの匂い、向日葵(ひまわり)、麦わら帽子、親戚の家、熱に倦む、旱(ひでり)星、お盆、麦茶


 ふいに面白いことを思いついた目つきで僕を見つめる。麦茶に入っていた氷がいまは口の中で頬を膨らませている。音もなく近づくと唇に吸い付き、器用に氷を僕の口の中へと押し込んだ。冷たさが移る。名残惜しそうに少しだけ舌先を触れさせて、笑いながら体を離した。
 たぶん僕はずっと無表情のままだった。

   †   †   †

 彼女の体は新雪のように冷たくて、熱に倦む夜、暑さを凌ぐにはとても役立った。
 もう死んでるもんね、と彼女は言った。海で泳いでて、足がつって、溺れて死んじゃった。あはは。
 でも彼女の説明する死因は日によって違った。病死。事故死。衰弱死。自死。傷害致死。焼死。墜落死。なんてことだろう、この世界はあまりにたくさんの種類の死で溢れている。

   †   †   †

 保存するには冷たい方がいいんだよ、と彼女は言った。

   †   †   †

 お盆明けの帰省ラッシュを体現するように、車内に空席はひとつもなかった。子供連れが多くて、甲高い声があちこちで響いていた。麦わら帽子が踊り、親戚の家で持たされたお菓子を分け合っていた。動き出す車窓の向こう側を僕は見つめていた、それ以外にすることもなかったから。
 長い乗車時間のあいだ、一度だけ席を離れた。電話を入れる用件があった。戻るとき、ふと乗客のひとりに目が止まった。制服姿の女の子。家族を伴わず、彼女はひとりきりで乗車しているらしかった。両隣の乗客は、彼女と関わりを持たないように思えた。もちろんそんな確証はどこにもないはずなのに、ごく自然とそう思えたのだ。
 携帯電話に向けていた視線を、ふいにこちらに向けて目が合った。まるで知り合いに対するときのような、親密な笑みを彼女は送った。僕は驚いてろくに応答もせず通り過ぎた。座席に座って、相変わらず高速度で流れ続ける窓の向こうの景色を眺めながら、僕が見ていたのは網膜に焼き付けるその景色ではなくて、謎めいた女の子の微笑だった。

   †   †   †

 ノートパソコンで作業をしていると、いつの間にか音もなく忍び寄ってきていて、遠慮のない勢いで僕の体にのしかかってきた。ケタケタと嬉しそうな笑い声をあげる。
 でも、重くない。小柄で華奢な彼女はもちろん一般的な意味で重くないことは分かりきっていたけれど、そうじゃなく、そのレベルをはるかに超えて軽かった。軽すぎた。人間ひとりのしかかっているはずなのに、僕が感じた重さはねこか、よくて小型犬といった程度のものだった。
 だってわたしはもう死んでるもんね。
 死んでも重さは変わらないよ。
 僕の反駁に、謎めいた奥行きのある笑みを浮かべて彼女は両腕を僕の首に回した。捨ててきたんだよ。耳元で、湿り気を含んだ吐息を絡ませるやり方でささやいた。邪魔なものは捨ててきた。余分な肉は海の底に沈んでるの。わたしの売りは身軽さだよ。あんなものはいらないの。
 ともかくこの日の彼女は「溺死者」パターンであるらしかった。

   †   †   †

 要らないものは何かと尋ねた。
 肝臓。腎臓。膵臓。脳の左半分。胃袋。小腸。大腸。そして子宮。
 というのが答えだった。

   †   †   †

 目覚めたとき、彼女は僕の手を取って、指の一本一本を舌先でちびちびと舐めていた。
 美味しくないと思うよ。僕は寝ぼけた声で言った。あと、くすぐったい。
 勝手に起きないでよ。珍しく彼女は不機嫌そうな声だった。それだけ言うと、またせっせと僕の指を舐め始めた。一定のテンポで、生真面目に、丁寧に、しつこく、彼女の舌先は僕の指をくすぐり続けた。
 くすぐったさに耐えつつ、スティックキャンディのように自分の指が徐々にすり減らされてしまう光景を、僕は思い浮かべた。でも、なすがままにされていた。仮にそのようになったとしても、それはそれで素晴らしいことのように、僕には思えたから。

   †   †   †

 制服の下には向日葵の写真がプリントされたシャツを身につけていた。かわいいね、と僕は言った。
 わたしとどっちが? 悪戯っぽい笑みを浮かべて彼女は尋ねた。
 決まってる、と僕は言った。そんなことは決まってる。でも彼女の求めたその答えを、僕は最後まで言わなかった。

   †   †   †

 降車する客の列に加わると少し前に先ほどの女の子の姿があった。背中に背負った褪せたレモン色のリュックサックが彼女の唯一の持ち物で、しかしその中身は大してなさそうに見えた。彼女はやはりひとりだった。話をするものも、寄り添うものもいなかった。
 新幹線を降り地下鉄に乗り換えるのが僕のルートだった。プラットホームの階段を降り、左手の改札を抜け駅の広間を突っ切り地下鉄駅構内に通じる長いエスカレーターを降る。その道のりを、女の子は僕に先んじて同じように進んでいった。地下鉄の自動改札を抜け階段を降り電車の到着を待つ、その電車の行き先も僕と同じものだった。彼女は僕を振り返ったりはしなかったし、それほど近い距離を歩いていたわけでもない。それでも僕は、自分がこの女の子を尾け回しているように見られるのを恐れて、彼女と離れた別の車両の列で電車を待った。彼女の姿はすぐに人ごみの中に消えた。
 到着した電車に十五分ほど揺られ僕は僕の住処の最寄駅に着いた。喉が渇いたので、自動販売機を探してペットボトルの水を買った。電車を降りた乗客の一群は大方去っていた。僕はのんびりと階段を登り地上へと上がった。改札を抜け、出口方向へと目を走らすと外は激しい豪雨に見舞われていた。夕方頃ゲリラ豪雨を警告する今朝のニュースを思い出した。傘はある。でも折り畳みの小型の傘で、轟音を立てるこの雨の中を守ってもらうにはやや心もとない大きさだった。しかし、まあいいだろう。僕は傘を組み立てながら出口の方へと足を進めた。いくらか濡れてしまうとしても、もうどうせ自宅に着くのだから、さっさと着替えてしまえばいいのだ。
 駅の出口では傘を持たず途方にくれて雨模様を眺める人たちがいた。その中に、あの制服姿の女の子がいて、そして笑いながら僕の方へと近づいてくるのだ。
 一緒に入れてよ。
 まるで気の置けない親戚の女の子のように馴れ馴れしく、当たり前のことのように、彼女は僕の傘の中に入り込んで、少しでもその恩恵にあずかろうと僕の体に身を寄せた。僕は当然混乱した。でも彼女の行動は絶対的で、迷いがなく、それに抵抗するのは間違ったことであるかのように思わせる強さがあった。彼女が馴れ馴れしいふりをするのであれば、僕もそれを受け入れるふりをしなければならない。そんなふうに僕は思ったのだ。
 いや、言葉を飾る必要はないのかもしれない。彼女は可愛かった。それだけ言えば十分なのかもしれない。

   †   †   †

 不必要な何もかもを焼いてきたのだと彼女は言った。この日の彼女は「焼死」パターンだった。
 大きな炎を作って、と彼女は説明した。そこに要らないものをとにかくたくさん投げ込んだの。ノートとか、体重計とか、トイレットペーパーとか、お母さんとか。それでいっしょに余分な肉も放り込んでおいたのね。こう、お腹からずるずるっと取り出して、じゅーじゅー焼いて。あはは、ホルモンみたいだね!
 どうやって取り出したの、と僕は尋ねた。
 簡単だよ、包丁でお腹に穴を開けて、手を突っ込んで取り出すんだよ。ちょっと傷が残っちゃうけどね、そんなに大きく切り裂く必要はないんだ。みせてあげようか?
 いまはいい、と僕は断った。

   †   †   †

 遠くで太鼓の音が鳴っていて、そのリズムに合わせて、彼女は握る手の力を込めた。その手は少し汗ばんでいた。ふたり並んで寝そべって、くぐもった祭囃子が混じる蝉時雨をぼんやりと聞いていた。窓は開け放していて、ときどき風が入った。蚊取り線香の煙がそれに合わせて揺れ、かすかな香りが鼻をついた。
 今年は雨が降らないね、と僕は言った。暑い。
 そうだよ、と彼女は答えた。決まり切った物事を言うようなその口調に、かすかに違和感を覚えたけれど、特に何も言わなかった。相変わらず太鼓の音は続き、そのリズムに合わせて、彼女は握る手の強さを変えた。視線を移すと、すぐ目の前に彼女の顔があった。その瞳は天井のどこかをじっと見つめていた。
 今年は旱星が強いから。
 あてもなくつぶやかれたその言葉の意味を、僕は全く把握することができなかった。

   †   †   †

 でも、ゆーちゃんだって捨てて身軽になった人なんでしょ。馬乗りの姿勢のまま、僕を見下ろす角度で彼女は言った。さて、何を捨ててきたのかな? 嬉しそうに笑う彼女の顔が、ゆっくりと、僕に近づく。

   †   †   †

 久しぶりに目にする故郷は記憶のものよりも小さく感じる。そんな一般論を蹴散らすように、数年ぶりに目にする駅前の街並みはにわかに発展していた。見たこともない商業ビルが出来上がり、子供の頃にはなかった活気が駅前のエリアにみなぎっていた。再開発は成功を収めているようだった。真新しい舗装や時計台は僕の記憶の中の光景を排他的に塗り替え、あるひとつの命題を僕に説き伏せようとしているようだった。ここはもう、お前の街じゃない。

   †   †   †

 この街のどこかにまだいるんだろうか。
 駅前のレンタカーで車を借り、広い市中をあちこち回った。何かあてがあったわけじゃない。記憶に残るかすかな風景だけを頼りに、その場所へと足を運び何かを求めるようにその場にしばらく佇んだ。でもほとんどの風景はどこかが致命的に変わっていた。僕の記憶と完全に合致する場所はどこにもなかった。そのことが、僕の記憶自体への信頼を失わせた。すべて嘘なんじゃないか。その迷いが喉を締め付けるように膨らんだ。あのすべては、僕の空想が生んだでたらめにすぎないんじゃないか。
 結局、思いつくすべての場所に足を運んでも、決定的な何かを掴むことはなかった。新たに足を運ぶべき場所がひとつもなくなってしまったとき、僕は途方にくれた。ここへ来ればすべては解決してくれるものだと望みをかけていたのに、その期待は裏切られ、僕はいままで以上にあいまいな立場に立たされてしまった。確かなことは何ひとつ思い出せなかった。場所こそがすべてを解決してくれるはずという僕の見込みは、間違っていたのだ。
 では、否定しなければいけないのだろうか?
 いつかまた会えるはずだと思っていた。そうじゃないのかもしれない。何もかも、初めからなかったことなのかもしれない。そのことを、僕自身ずっと前から気付いていて、でも結論することを先延ばしにして、誤魔化していただけなのかもしれない。だから僕はこんなにも長い間、この街に戻らなかったのだ。
 いつかまた会えるよ。その言葉はいまも耳に残っている。ずっと残って、僕を支配し続けてきた言葉だ。僕はずっと待っていた。そういう幸福が先にあることをエクスキューズにして僕は生き続けてきた。それがなくなってしまったいま、僕が取るべき道は、ひとつしかないんじゃないだろうか?

   †   †   †

 かぐや姫はいいよね、遠いって言ったって月だもん。いまや行けない距離じゃない。でもわたしは、あの旱星。五百光年も先の星へなんて、誰も行けない。今年は旱星が強い。それって、そういうことなのかな。

   †   †   †

 その白く薄いお腹に包丁で切り開いた傷口はどこにもなかった。綺麗でなだらかな皮膚が、裂け目無く綺麗にその胴体を覆っていた。
 僕は架空の傷口に唇を這わせた。吐息のような彼女の声が漏れる。意味なんて、どこにもない。

   †   †   †

 子供の頃遊んだ女の子には、翼があった。彼女に抱きかかえられて、僕はあちこちを飛び回った。俯瞰して眺める街の光景はいまも僕の脳裏に焼き付いている。
 彼女と遊べるのは夜遅くになってからだった。誰もかれもが寝静まる時間、僕たちは家を抜け出してこっそり遊んだ。背の高いマンションの屋上に忍び込んで、そこから夜の空へと飛び立つ。それは本当にあったことなのだ。彼女と眺めたいろいろな光景を、僕はいまも、鮮やかに記憶している。

   †   †   †

 みせてあげると彼女は言った。僕は首を横に振った。それでも彼女は、ゆっくりとシャツをめくりその肌を露出させた。

   †   †   †

 部屋に入るなりのどが渇いたと訴えるので、僕はグラスに氷を入れ麦茶を注いだ。床に座った彼女は当然のことのように濡れた制服を脱いでいた。僕はタオルを手渡した。服はハンガーに掛け、とりあえず部屋の中で吊るしておいた。
 外はまだ豪雨が続いていた。激しい雨音に取り囲まれ、部屋は孤立性をいつもよりも高めていた。彼女の存在はその孤立感を弱めはしなかった。音もなく麦茶に口をつけてから、ごしごしとタオルで髪を拭いていた。入念に、執拗に、その動作は繰り返された。

   †   †   †

 ねえ、嘘つきには嘘つきがわかるんだよ。そう言って彼女は笑った。いままで見た、どんな笑顔より、それは屈託のない笑顔だった。

   †   †   †

 じゃあまたね、と彼女は言った。僕は小さく返事した。のどの奥から漏れる、うなり声のような返事だ。外はよく晴れていて、気温はますます高くなりそうだった。入念に塗り込んでいた日焼け止めの匂いが、かすかに漂って僕の鼻先を刺激した。
 いつかまた会えるよ。僕の目を見て彼女は言った。その言葉の意味するものを、僕はよく理解している。
 元気でね。僕は精一杯の気安さを装って別れの挨拶にした。でもその表情は固まっていた。それを見咎めた彼女は指を伸ばし、僕の左側の頬をつまんで無理やり口角を上げさせた。形の歪んだ唇に、自分の唇を押し付けた。その時間は長く続いて、でも唐突に終わると、何も言わずに踵を返して玄関のドアを開けた。ドアはすぐに閉まり、彼女の姿をとどめるものは、それでもう何もなくなった。

   †   †   †

 彼女のこともやがてあいまいになって、その実在が疑われるのかもしれない。僕は不安になった。何もかもに脈絡がなくて、嘘だらけで、支えというものが彼女にはなかった。残っているものは彼女に触れたその感触と、見え透いた嘘と、そして奥行きのある愛おしくも謎めいた微笑みだけだ。
 でも、ともかく、それがどんなに頼りなく不確かで有効期限がどれほどのものなのか心もとないのだとしても、新しい啓示は僕に与えられた。いつかまた会えるよ。その言葉は僕を支配し、先の幸福を予感させ、生き続けるエクスキューズとして機能してくれることだろう。
 元気でね。
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  ※コメントタイトルでネタバレしないでください。
  ※コメント本文ネタバレ可。
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拝読致しましたv

拝読後、ふっと脳裏に浮かんだのは、『ツァラトゥストラはかく語りき』でした。

これだけ沢山のお題を入れて、こんな凄いエクスキューズを書かれるとは……。
ただただ、感心致しました。

拝読しました。

今年も素敵な作品を拝読させてもらいました。
一度読んでん?と引っかかり、二度読んで、ああなるほど。三度目で「さすが安定の筆力」と感心した次第です。
断片的に浮かび上がるシーンはパズルのようで、それが入れ替わり組み合わさることで一つの物語ができあがる構成にただ圧巻です。
主人公のゆーくんと「彼女」の恋物語は艶があって、時々どきりとさせられて、でも何処が寂しさと儚さを帯びているような気がしました。
彼女との約束は果たされないのかもしれない、そんな不安を抱えつつも希望にすがろうとする主人公の心情が印象的でした。

拝読しました

あかいかわさん、こんにちは。
作品読ませて頂きました。

時系列がばらばらな場面場面を、頭の中で組み替えながら読んでゆく、絵合わせパズルのようなイメージの作品でした。

彼女が羅列する要らないものの中の「そして子宮」、「お母さんとか」という、一番最後に述べられるものの重さにどきりとしつつ、そこに彼女が自分を「死んでいる」と言う理由、何度も何度も、様々な方法で死体になることにした、心の闇が窺えるような気がします。

美しい恋物語ですが、彼女が「ゆーちゃん」と出逢ったその日から、「ゆーちゃん」の気を惹くために、積極的に自分を差し出してゆくことが悲しい。
首を横に振られたならば、みせてあげなくていいんだよと、彼女に教えてあげたい気持ちになりました。
あなたは知らないことかもしれないけれど、そんな風にしなくても、「ゆーちゃん」はここにいていいと思っているよと。

おそらくは叶えられない幸福をよすがに「ゆーちゃん」は生きてゆくのかと、最後まで切なくて、孤独を感じるお話でした。

拝読致しました!

 一度読み、二度読み終えて飽き足らず、場面場面を時系列順に並べ替えてみながらじっくり三度読み。推理すると言うよりは、細切れになったフィルムを繋ぎ合せているような心持ちになって堪能させていただきました。
 話の並べ替えにも頭を捻りましたが、主人公の独白の一つ一つがとても印象的で、哲学書を読んでいるような不思議な感覚にも陥ります。

 緻密な構成を、たったこれだけの枚数にまとめ、さらに相当数のお題を無理なくさらりと組入れてしまう技量に感服いたしました。

拝読いたしました

あかいかわさん、こんにちは。

読んでも読んでも、どこまでもお話が続いていく感覚が凄い、と思いました。他の方もおっしゃっているような「パズルを組み立てる感覚」に取り込まれそうになりますw

文章中に現れる、エロティックな雰囲気もなんとも言えません。包丁の跡などない、白いお腹の表現や指を舐める仕草等など、耽美だなぁなんて感じていました。
ゆーちゃんは大学生辺りなのかなと思わされる一方で「彼女」はいくつくらいなのだろう、と考えていました。「黄色のリュックと制服」というワードから、まさか小学生?なんて思ってしまったのですが、流石に耽美が過ぎますよね…。

「みせてあげる」拝読しました。

はじめまして。お話拝読しました。
正直に申し上げますと、このお話に関しては自分の解釈と言うか、考察にまったく自信がなくて…もしかしたら見当はずれな感想を書いているかもしれませんがご容赦ください…!

拝読してまず連想したのは「風立ちぬ」でした。
サナトリウム文学の匂いがする、と思った理由は明るく健やかそうに見える彼女にちらほらと覗く死の予感、登場人物が二人きりという世間から隔離されたような配置、初めから決まっていたかのように訪れる別離とラストで一人になった主人公が生に希望を見出すくだり…などです。
物語の世界も彼女にスポットを当てることで、病室のようにどこまでも白く見えました。

「嘘つきには嘘つきがわかるんだよ。」という台詞がありますが、主人公は作中では彼女に一度も嘘を言っていないんですね。言いたくないこと、言いにくいことは口にしないだけで嘘はついていない。
それは彼女への愛情だったんじゃないかな、と私は思います。
多分彼女は、周囲の人からやむを得ず嘘をつかれることが多い子だったんじゃないかな。

儚い夢のようなお話ですが、ラストで主人公が抱く生きる希望が眩しいです。
彼が生きているのは彼女のお蔭、なのかな…終始自信のない感想ですみません。でもじっくりと噛み締めたくなるような味わい深いお話でした。

拝読いたしました。

官能的でリズムのある文章が魅力的で、先へ先へと読ませられました。
謎めいた彼女との出会いと交わりの日々が、現実とかけ離れた空間を体感させられます。主人公の悲しみのような豪雨によって隔絶された部屋の中は、外とは正反対に満たされない想いに旱のように乾ききっているように見えます。
けれどそんな夢のような日々が、過去の故郷での思い出の喪失を補ったのか、新たに自身を動かす力になったのか、豪雨が晴れた外の天気が主人公の心を思わせていたと感じました。
しみじみとした、喪失と再生のお話を楽しませていただきました。

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