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千客万来 by 和

作:和 HP:なごみのお茶屋さん
分量:23枚  使用お題:蝉時雨を聞く、汗を拭う、暑さを凌ぐ、二度目の水浴び、川遊び、向日葵(ひまわり)、麦わら帽子、茄子のぬか漬け、麦茶、打ち水をする


 都心から電車で五時間ほど離れた、とある田舎——村の小学校の近くに小さな店がある。
 文房具・雑貨屋を兼ねたその駄菓子屋は昭和の初めから続く店で、古くから村の人の生活を支えていた。聞けばそのお店は私の曾祖父が開いたものだと言う。
 私が二代目である母方の祖母からこの店舗兼住居を継ぎ、幼子のシキと暮らし始めたのが四年前のこと。
 根っからの都会育ちの私にこの店が務まるかどうか、初めは不安だった。
 店の経営なんて初めてだったし、シキはまだ幼くて我儘で、実際かなり手を焼かせられたし。
 物理的な不便さ、閉塞的で濃厚な人付き合い。
 でも、そんな慌ただしさや変化は日を追うにつれて当たり前となり、日常へと昇華する。
 気がつけば私は身も心もこの村に溶け込んでいた——


 私の一日は夜明けとともに始まる。
 この日一番の仕事は庭の畑にある野菜の収穫だった。
 今の時期は茄子とピーマンがいい頃合い。朝露に濡れた葉や茎はざらさらしていて、触ると猫の舌を触っているかのよう。
 対照的に実りのすべては、つるんとしてまるまる太っている。その肉付きに手ごたえを感じた私は、丁寧に野菜を獲っていった。
 籠いっぱいの野菜を抱えて家に戻り、朝餉の準備を始める。
 朝は白米の握り飯に胡瓜と茄子のぬか漬、卵焼きに豆腐の味噌汁だ。私は出来たおかずを手際よく皿に分けていく。
 自分のぶんと、シキのぶんと、小さな小皿は仏様のお供えの分。
 先に自分の朝ごはんを腹におさめ、私は仏間へと向かう。座敷ともいわれるそこは八畳の和室だ。襖の奥にはまた同じ広さの部屋が続き、そちらは奥座敷とも呼ばれている。
 ご飯と茶を供え仏壇の御鈴を鳴らすと、襖ががたりと揺れた。奥座敷から齢六つの女の子が現れる。下着姿のまま、お腹すいたと訴えてくる。
「ごはんちょうだい」
「はいはい」
 私はお供えと一緒に持ってきた盆に手を伸ばし、握り飯をシキに渡した。空きっ腹のシキは夢中でそれにかぶりつく。
「ゆっくり食べなさい。麦茶も飲むのよ」
「卵焼きは?」
「ちゃんとあるから——って、三郎駄目っ!」
 私は思わず声を上げた。何時の間にいたのだろう。座敷に大きな猫が上がり込んでいて、まさに卵焼きに前足をのっけようとしていたのだ。
 山猫の三郎はシキの親友だ。でも食い意地が張っていて、すぐに人の食べ物をとってしまう。 
 私は三郎を追い払おうと手を差し伸べる。
 その前にシキが三郎の顔に張り手をくらわせ吹っ飛ばした。猫の、鋭い声が耳をつんざく。
「これはシキのぶんっ!」
 卵焼きの皿を抱えるシキを三郎は睨んだ。低い声でふぅ、と威嚇したがシキも負けていない。うぎゃあ、と大きな口を開けて対抗する。
 私はひと騒動が始まる前に、かつおまぶしたっぷりの猫まんまを置いた。すると効果てきめん。三郎は鼻をひくつかせたあと、まっしぐらに猫まんまを食い始めたではないか。
 一人と一匹の豪快な食いっぷりに私は一息つく。平穏が再び訪れた所で、私は改めて、先代をはじめとする仏様たちに手を合わせた。 


 ——雑貨屋を兼ねた駄菓子屋は毎朝七時半に開店するのが先代からの習わしだ。
 店に入った私はまず、釣り銭を引き出しに仕舞う。そして商品の上に被せた埃よけの布を取り払い、部屋の隅にある籠の中へ放り込んだ。
 品物の数と種類を目視し、変わりないことを確かめる。最後に立て付けの悪い硝子戸を開けた。
 朝日が一気に差し込み、店の中が急に色づいてくる。
 正直、開店直後に客の出入りはほとんどない。学校がやっていれば、学生の誰かが文房具を買いに来ることもあるけれど、今はそんなこともない。事実上の開店休業だ。
 まぁ、誰かしら来れば大声をあげて呼びにくるだろう。
 私は店の前で打ち水をすると、早々に奥の部屋へとひっこんだ。
 ギシギシと音を奏でる廊下を渡り住居のある離れへ足を運ぶ。手前の台所を素通りし奥の座敷へ向かった。
 八畳部屋は相変わらず玩具で散乱している。部屋の主であるシキの姿はなかった。もしかしたら、三郎と庭で遊んでいるのかもしれない。
 遊ぶなら片づけくらいして欲しいわ。
 私は小さく息をつくと、散らかった玩具を戸棚の上に並べていった。
 どんぐりの独楽にブリキねずみのツンとクェ、ねじ巻き兵隊のジョバンニは片足をあげたまま絶妙なバランスを保っている。
 これらの玩具は私が昔から使っているもの。名前も全て私がつけた。シキは私の思い出の品をとても可愛がってくれている。
 畳の上が綺麗になった所で、私は箒を動かした。塵と埃を縁側の先へと追いやる。最後に、床の間に置いてある市松人形に手を伸ばした。
 大層な台座に飾られているそれは如何にも、な日本人形だ。普段はまっすぐな黒髪に着物をまとった彼女だが、全てを取り払われた今は上品な顔も台無しである。
 私は人形の側にある市松模様の小箱を開いた。沢山ある着物の中、私は白地に赤い朝顔の柄の浴衣を選び着せてあげる。ついでに髪を結ってボンを添えた。出来上がった姿は見た目にも涼しそうで、ほんのりと色香を漂わせていた。


 家事をひととおり済ませ店に戻ると油屋のおばあちゃんが店の「あがりまち」に座っていた。
 今朝獲れた玉蜀黍(とうもろこし)を届けがてら、台所で使うスポンジを探しにきたのだという。
 スポンジはすぐ見つかったが店の陳列棚にあるものは日に焼けてしまっていて使いものにならない。というわけで私は戸棚の中から新しいものを出すことに。すると、今度は上原の奥さんが殺虫剤を買いに来る。そしてそれぞれの勘定を済ませた直後、中(あたり)のおばちゃんが店にやってくる。
 三人寄れば何とやら。店頭で井戸端会議が当たり前のように始まる。しばらくして、そのかしましさにつられるように小学生たちがやってきた。
「水下さーい」
 麦わら帽子をかぶった彼らは川遊びの帰りのようで、喉が渇いたらしい。店にあるジュースを買わず、あえて水を求めるのは年頃の子どもたちならではの知恵だ。
 私は黙って湯呑茶碗に水を注ぎ、彼らに渡す。子どもらはごくごくと喉を鳴らして飲み干すと満面の笑みでごちそうさまでした、と述べた。ありがとうございます、の声色がとても清々しい。
 何時の間に居たのだろう。気がつけば奥座敷にいる人形とお揃いの、白い浴衣を着たシキがせんべいの入った角猫瓶の前に立っていた。その口にイカゲソが入っていたので私は唸る。
 店のものを勝手に食べるんじゃない。
 私はシキに向かって睨みつける。するとシキは目じりに人差し指を置き、舌を出して威嚇してきた。側にあった値札を掴むと、袖の内に隠していた赤いいマジックで何かを書きはじめる。
「あ、こら何を——」
 私が思わず身を乗り出す。すると、タイミング悪く私の背中側にいた小学生たちが勘定を求めてきた。こうなってしまってはシキから目を逸らさなければならない。
 私は泣く泣く電卓に手を添わせた。
 駄菓子屋は子どもの社交場とはよく言ったものだ。
 百円以下の少ないお金でどれだけ沢山のお菓子を買えるかが彼らのステータスであり誇りである。
 しかも十円のスナック菓子や五円のチョコだから数えるのに非常に時間がかかって仕方ない。
 三分後、お金を回収した私はやっと角猫瓶のそばにたどり着けた。そして絶句する。並べられた瓶の中の菓子全てが一円に値下げされていたのだ。
 突然のタイムセールに子どもたちが目ざとく気づく。
「おばちゃん、これもちょうだい」
「俺も」
「私も」
 シキの悪戯は今に始まったことじゃない。勝手にお菓子を漁る、くじをスカから当たりにすりかえる、値段を勝手に下げる——
 私とシキは常に攻防戦の繰り広げていて、その勝敗は今や五分五分だ。全く。今度見つけたらお灸据えてやるんだから。 
 十一時半の警報が鳴ったら子どもの集会と井戸端会議はあっさりとお開きとなった。皆これからお昼を食べに家に帰るのだ。
 気がつけば店の中にシキがいない。奥にひっこんだか、庭に出ているのだろう。
 客が一気に引けたので、私もいそいそと台所へ向かうことにした。


 今日の昼御飯は素麺だ。でもそれだけじゃ栄養が偏る。思う所があって、私は朝採った茄子とピーマンをフライパンで揚げた。氷と生姜を浮かべた麺つゆの中に浸す。
 それにさっき油屋さんから貰った玉蜀黍と切ったとまとを添えれば見た目も鮮やか。爽やかな昼食の出来上がり。
 うーむ、やっぱりたんぱく質が足りないな。
 私は冷蔵庫の中を探る。けどたんぱく質がありそうな食べものは豆腐しかない。あとは油揚げが一枚。卵は三個ほどあったけど、朝使ったから今日はもうやめておこう。肉、あとで買いに行かなきゃ。
 そう思いながら冷蔵庫を閉じると、風にのって十二時を知らせる音楽が。これは山を超えた隣町から流れてくるものだ。
 この時間差攻撃は私にとってありがたい。おかげで昼餉の準備を効率的に行うことができるのだ。
 奥座敷にある座卓に私はもろもろのおかずを並べる。
 そうめんに玉蜀黍、そこまでシキはご機嫌だった。茄子とピーマンの揚げびたしを見た途端、彼女の顔色が変わる。
「これいらない」
「好き嫌いばっかり言っていると成長しないよ」
 そう言って私は素麺をすすった。冷たく突き放す私のそばで、シキはぷうと頬を膨らませる。その頬が真っ赤に染まって行くのが目に見えてくる。
 そのうちカタカタと座卓が揺れ始め——地震ともいえる振動に私は身を強張らせる。
 心なしか、ガラスの器が膨張しているような。尋常じゃない動きに流石の私も焦りが走る。戸棚に整列した玩具たちがふわりと浮いた。
 ちょっとやりすぎたかなぁ。
 そんなことを思いつつ、私は徐々に後ずさりシキとの距離を広げ、間合いを取る。刹那、バイクの音が耳をかすめたので、私は隙を見て店へ逃げた。
「御苦労さまです」
 この時間に訪れるのは郵便屋さんだ。彼は一日に一度、店の前のポストで集荷作業を行っている。
「いつものコレ、今日も冷やしておきましたよ」
 私は店にある小さな冷蔵庫から缶コーヒーを出すと彼に差し出した。彼がキンキンに冷えたそれを受け取り、丁寧に頭を下げる。それから手持ちのタオルで汗を拭うとポケットから小銭を出す。
 この後、彼はポストの隣にあるベンチで暑さを凌ぐ。缶コーヒーを左手に取り過ごす休息は彼にとっての日課であり至福の一時らしい。
 その間、私は店のあがりまちに座り、彼が奏でる鼻歌に耳を澄ます。流れてくる楽曲は私の知らない歌だけど、どこか懐かしい。心にじわりと染みてくる。
 再びバイクのエンジン音広がった所で私は重い腰を上げた。シキの様子を伺いに住居へ戻る。
 あの八畳の奥座敷をこっそり覗けば、シキが畳の上で大の字を描いていた。近づいてみるが、ぴくりとも動かない。完全に寝落ちている。座卓にあった素麺と玉蜀黍の器は空っぽで、揚げ浸しの入った小鉢には反抗の証ともいえる緑色の物体が残されている。私のぶんの麺を食べられたのは癪だがそれでもまぁ、茄子を食べただけでもよしとしよう。
 私は小さな笑みを浮かべると、残ったピーマンを摘まんで食器を片した。
 太陽は一日で一番の高さまで昇り詰めてゆく——


 三時を過ぎると、再び子どもたちが店に集まった。そのほとんどはプール帰りの少年少女たちだ。その中には午前中に見かけた顔もちらほら。二度目の水浴びは彼らの肌を小麦色に焼き付けていた。
 店の温度計はすでに三十度を超えていた。
 こんな日はかき氷がよく売れる。今日の一番人気はいちご味。私が冷凍ケースから氷の塊を抱えると、子どもたちからおお、の声が広がる。
 昔ながらのごつい機械にセットし、ハンドルを回す。ガラスの器に白い雪が舞うと歓声と拍手が湧いた。
 よしずの立てかけられたベンチに
 私は求められるがまま、ひたすら氷を削っていく。
 そして何個目かの氷の塊が半分以下になり、いちごのシロップが底を尽きかけると、今度は中学生の男女が訪れた。どうも様子がおかしい。女の子は肩を震わせ、顔をくしゃくしゃにしてしゃくりあげている。そして男の子は何処かキレ気味だ。
「だーかーら。もう泣くな」
「だって……」
「だってもくそもあるか! 駄目なものは駄目なんだよ」
 少年の一言が少女の傷ついた心をえぐる。なかなか泣きやまない少女の姿を見て小学生たちが騒ぎ始めた。
「あー女の子泣かせてる」
「いじめだいじめだ」
「うるせえ! ガキは黙れ!」
 少年は小学生たちを一喝したあとで私を見た。いちごのかき氷をリクエストされ、私は思わず頷く。だがシロップが足りない。 
 私はない頭をしぼった。妙案を思いつき離れの台所へ走る。すぐに戻って急いで氷を削り器に持った。少年少女が座るテーブルの前にそっと差し出す。
「食え」
 少年は言った。少女が鼻をすすりながら、ゆっくりと顔をあげる。
「おまえ、いちご好きだろ」
 厳密にはいちごの練乳かけである。でも少女はスプーンで氷を削り、少しずつ口に運んだ。
「うまいか?」
「ん」
 ……やや落ちついた所で、少年はとつとつと話し始めた。
「そりゃ、アイツが部活辞めるのは俺も納得いかないよ。でも、アイツは自分なりに考えて結果を出したんだ。俺らが邪魔する権利はない。それはおまえもわかってるだろ?」
「ん」
「なら、潔く認めてやるのが俺たちの務めってもんだ」
「でも。アイツが居なくなったら部活はどうなるの? 二人だけじゃ部活動として承認されないし」
「また募集すればいいだろ? 誰も入らないなら同好会でもすればいい。どっちに転がってもおまえには俺が一生ついていてやる。だから。それで我慢しろ」
 少年の言葉に少女はしばらくきょとんとしていたけど、そのうち頬が目の前のかき氷の色に染まっていった。そっぽをむいた少年の、怒ったような、少し照れくさそうな顔がまぶしい。
 こんな甘酸っぱい雰囲気に周りが騒がずにいられない。店内はしばらくの間黄色い歓声と囃子声で包まれていた。


 五時の鐘が鳴ると子どもたちはみんなそれぞれの家へと帰っていく。
 店に人がいなくなったので私もシキを連れて買い物に出かけることにした。ごく近所なのであえて鍵はかけず、ガラス戸だけ閉めて出発する。歩きはじめると山猫の三郎があとについてきた。
 バス通りの先にある冷房の効いたスーパーで、私はひき肉を買った。今日はハンバーグにするよ、とこっそり伝えるとシキの目がキラキラと輝いた。
 ハンバーグは偉大だ。言霊を述べるだけでシキの機嫌が良くなる。野菜を細かく切って肉の中に隠してしまえば野菜嫌いのシキも何ら問題なく食べてしまうからだ。
 帰りは行きの道をたどらず、スーパーの裏から遠回り。帰りはシキが私のずっと先を歩いている。帯の蝶々がふわふわと揺れていて、ご機嫌なのがすぐわかる。
 店の裏には楽園が潜んでいた。それは一面に広がる太陽の花。畑の一角に植えた向日葵の群れはこのへんに住む人が道楽で植えたものだ。
 シキはこの向日葵畑が大好きだ。
 土手を駆け下りるシキ。自分の背丈以上もある黄と緑の海に飛び込む。三郎とおいかけっこを始める。シキや三郎がすり抜ける度にざわ、ざわと揺れる。
 大輪の花弁は夕陽を浴びてキラキラと輝いていた。
 このぶんだと明日も良い天気になりそうだ。 
「そろそろ帰るよー」
 頃合いをみて、私は声をかけた。向日葵の森から一番に出てきたのは三郎。続けてシキがのろのろと現れた。シキの足取りは途中、名残惜しそうに振り返り、ゆっくりと私のもとへやってくる。
 私は足元にすり寄る三郎を抱えた。
「またね」
 シキが空を仰ぐと、それに応えるように優しい風が吹いた。向日葵畑をぐるりと一周駆け抜けてから、夕陽に溶けていく。
 一時の静寂が訪れる。
 蝉時雨が再び戻ると、私の腕の中にいた山猫は前足をだらんと垂らしていて、すっかり生気を失っていた。 


***

 ——時は夕方、駄菓子屋の主が店を空けている頃に戻る。
 店の前には先ほどかき氷を食べた少年少女が困ったような顔をしていた。
 どうやら二人は店の中に忘れ物をしてしまったらしい。
 何度も言うが、この店は鍵がかかっていない。だからいつでも中に入ることができる。このままこっそり忘れ物を取りに行くこともできた。だが二人には主の居ない店内に入る勇気がなかった。
「……ここってさ、時々不思議なことが起こるよね? おばさん一人しか居ないはずなのに、部屋の奥から物音しない?」
「子どもの笑い声とか?」
「いつだったか、猫のぬいぐるみが急に飛んできたこともなかった?」
「あったあった!」
「——それはぼっこのせいさ」
 彼らの会話を耳に挟んだのか、さっきからベンチで煙草をふかしていた老人がぽつりと呟いた。
 少年少女が思わず振り返る。
「ぼっこ? ぼっこって?」
「座敷ぼっこ(童子)のこと?」
「そう。ぼっこは悪戯するが、福の神だ。ぼっこの居る家は栄える」
「まさか」
「事実、この店は繁盛している。先代のばあさんが亡くなって、その先の小学校がなくなって、バス通りの反対側にでかいスーパーができても、潰れやしない。
あの店は品数も少ないし値段もそんなに安いわけじゃない。けど、みぃんなあの店に足が向いちまうんだ。なんともけったいなことさ」
 老人が吐き出した紫煙がふんわりと風に乗って道の果てへと飛んでいく。
 その先に、店の主の姿が見えた。
 左手にスーパーの袋を引っ提げ、脇に猫のぬいぐるみを抱えている。
 彼女の右手は宙ぶらりんで——でも何かを優しく掴んでいる。
 それはそれは、とても愛おしそうに。
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  ※コメントタイトルでネタバレしないでください。
  ※コメント本文ネタバレ可。
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Comments for this article...

拝読しました

和さん、こんにちは。
作品読ませて頂きました。

冒頭から、シキちゃんと主人公はどういった関係なんだろう? とまず気になり、「奥座敷」から現れる、「シキ」という名の女の子にぴんときて、市松人形の下りににやりとしました。
このシキちゃんの、小憎らしいけど可愛いこと!
大事にしながら媚びるのではなく、この小さな福の神様と主人公の、細々とした攻防がくり返されているんだろうなという、日常にほんわかとしました。
村の人たちにも素朴な味があり、特に郵便屋さん、実は主人公に惚れてませんか?
情景が次々に目に浮かぶような描写が素晴らしく、特に食べ物が、絶対全部美味しいよーと、お腹のすく、心が優しくなれるお話でした。

拝読いたしました♪

一代飛ばして引き継いだとなると、観得る人で、出るのかな? 
と、思いましたら、矢張り、出ましたねv
それも、きっちりと一緒に生活しているなんて、素敵過ぎます!!

とても悪戯振りが屈託のないシキちゃん、可愛いですねぇ!
このような童に、好き嫌いしてはいけませんと、お野菜のお食事を作ると言う発想が、とても面白いです。

ほっこりと心温まり、和やかな気分になる御話、有難うございました。

シキちゃんの愛らしさ

拝読しました。シキちゃんの「正体」は途中で見当がついたものの、そのことが作品の魅力を損なっておらず、かえってほっこりした読後感には合うものなのだなと思いました。シキちゃんの可愛さが作品の全部のシーンからにじみ出てくるような作品でした。「ひとならぬもの」に愛情をベースに置いた、適度な厳しさで対せる主人公も、魅力的でした。

シキちゃんという名前からおや?とは思っていましたが、行動が可愛くて、自然で気付かなかったのですが、最後でそういう事なのか!と気付きました。

途中シキが1円にしちゃって、これは千客万来だ!と思ったのですが、最後でこちらの意味もあったのか!と思いました。

後、凄く描写が丁寧で勉強させていただきました!

「千客万来」拝読しました。

はじめまして。「千客万来」拝読しました。

シキちゃんは「四季」ちゃんで、例えば夏だけのお友達だったりするのでは…なんて推測を立てながら読んでいたので、そっちのシキかー! と驚かされました。可愛らしくていいお名前です。
そんなシキちゃんと一緒の生活は優しさと温かさに満ち溢れていて、ゆったりした時間に身を任せたくなるようなお話でした。
主人公は四年前からシキちゃんと暮らしているとのことですが、実は子供の頃に会って一緒に遊んだことがあったりしないかな、などと妄想も膨らみました(笑) 四年目にしては育て慣れてる感じもありますし(育てるという表現が適切かどうかはさておき)、お役目を引き継ぐ前に何度か顔合わせがあってもおかしくないかな、なんて。

文章がとてもきれいで、描写も巧みで、素敵なお話でした。

拝読致しました!

 可愛い! 作者様のお名前とサイト名どおり、ほっこりと和ませていただきましたv
 シキちゃんの正体は序盤でピンときましたが、それで肩すかしということは全くなく。シキちゃんと主人公さん、そして訪れるお客さんたちとのやりとりがイキイキとしていて、読んでいて心が温かくなるお話でした。

 それにしても、朝ごはんに始まり、猫まんまに水にお昼ご飯に缶コーヒーにかき氷にと、作中の飲食物の美味しそうなこと! 私もシキちゃんと卵焼きが食べたいです(笑)

拝読いたしました

和さん、こんにちは。

シキの無邪気な様子と、店主さんの家事に追われながら経営を熟す姿が本当の親子のようで、微笑ましい光景です。
市松人形の下りから「シキは付喪神なのかな」なんて思ってしまいました。
商品を全て1円にされてしまった辺りで「なんてことをするんだ!」と憤ってしまいましたが、それがあってもなお、繁盛させることのできるシキの力は凄いですねw

読ませていただきました。

やさしくてあったかくて、なんともほっこりする作品ですねぇ。
シキちゃんも三郎も、主人公もとても可愛らしい。
なにより、細かな描写の丁寧さが素晴らしいです。
田舎の夏の、暑いけれどすこしそわそわするような、爽やかで優しい風が吹き抜けるような、そんな空気を感じさせてくれました。

拝読いたしました。

超常現象のあたりでもしかしたらのシキちゃんの正体でした。
曽祖父が開いた田舎の店舗とはいえ敷地が広そうなのは、元々この地の住人で、何かのきっかけで店を開いたのかな、それこそぼっこさんが来て乞われたのかなと、いろいろ想像できて楽しかったです。
浴衣の柄から日本人形の霊のようなのですが、主人公が子持ちのように描かれているのは、一緒に土地を離れていたからでしょうか。だからぼっこの話も、このところ村から途絶えて知らない子どもが出てきたのかなとか。
ただ一人称の語りが楽しかったぶん、最後の種明かしでの視点の変更が作品の空気を変えてしまったような感じでちょっと残念に感じます。猫を抱いての帰り道に子供達と話を交わし、彼らとの認識の違いをそれとなく漂わして、もしかしたらの推測を読者に持たせると、読み込む面白さが大きくなったかなと思いました。

読ませていただきました

紅月赤哉です。
作品、読ませていただきました。

こうした日常の一ページをある程度細かく描写していくのはとても好きで、じっくり楽しんで読みました。
一日がどこかゆったりとした時間が流れていくように感じて、訪れる人らにも最後には笑顔が宿るなど、座敷童の力なのかもしれませんね。

素敵な作品、ありがとうございました!

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