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今はもうない星 by 葉月 14

作:葉月 14
分量:3枚  使用お題:スイカ、親戚の家、旱星  


 頭上には満天の星空。
 この小さな田舎町を一望できる丘に座って、俺と千草(ちぐさ)は星を見ている。
 鼻の中を通る草の匂い。秋を伝える虫の声。
 二人共体育座りで両手を後ろにつき、星空を見上げている。

 夕方頃、急に
「優樹(ゆうき)!星を見に行こう!」
 なんて、ハイテンションで誘いにきた千草。
 短パンにTシャツなんて、到底同い歳の女子高生とは思えない、小学生男子みたいないつもの格好で。

 お前の考えてることなんて、お見通しなんだよ……。
 どんだけお前と一緒にいると思ってるんだ……。

 だから俺も無理して、負けないくらいのハイテンションで相手をした。
 先週都会に住む親戚の家に遊びにいったけど、やっぱ都会は全然星が見えねぇな、とか。
 南の空、さそり座の一際赤く光る星、アンタレスを旱(ひでり)星って呼んだりするんだ、とか。
 スイカの原産地って南アフリカなんだって!
 星関係ないじゃん!
 とか、たわいのない話して、笑って。

 不意に会話が途切れ、すぐ隣にいる千草が星を見上げる。

 ポニーテールで纏められた黒髪、肩から腰までの女性らしいライン、綺麗な脚。大きな瞳。
 俺は目を奪われそうになった自分を隠すように、慌てて逸らそうとすると、
「達哉(たつや)が言ってたんだよね……」
 千草が星を見たまま、まるで独り言のように呟いた。
 俺は再び、千草から目が離せなくなる。

「光っている星も、今はもうない星なのかもしれないって。星そのものがなくなっても、光が後から届くから、まだあるように見える星もあるんだって」

 星が好きで、千草とよく見に行ってた達哉先輩。
 千草の恋人だった達哉先輩が亡くなってから2週間。
 それから千草は家から出なくなった。

 千草は俺の目を見て、涙をこらえながら続ける。
「いつまでも……このままじゃ……いけないよね?いけないってわかってるんだけど……」
 いきなり俺の胸に顔を埋め、泣きじゃくる千草。
「ごめんね……ごめんね……」
 ただ千草は、胸の中で繰り返していた。

 達哉先輩の葬式でも、告別式でも、見せなかった千草の涙。

 抱きしめたい。
 抱きしめてしまいたい。

 でも千草の肩に回そうとした俺の右手は、空中で止まったかのように動かない。
 地面についたままの左手が、草を土ごと握り潰す力だけが強くなる。

 俺の星も、千草の星も、その光だけは見えるけど、もうここにはなかった。
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拝読しました。

原稿用紙三枚という短い空間の中で、こんなにも切なくさせる物語。
達哉先輩の立ち位置そのものがずるいです。なんてずるいんでしょう(褒め言葉です)
優樹や千草の背景や心情が、台詞ひとつ、仕草ひとつですっと馴染んで、共感すら覚えてしまう。
これはすごいなぁと思いました。ただただ圧巻です。

拝読いたしました

 葉月 14さん、こんにちは。
 作品拝読させていただきました。

 幼馴染がじゃれあって、その中に恋心が滲んでいて、と、優樹の恋心がメインのほのぼのとした物語だと思っていました。
 しかし、千草の恋人を失った悲しみを吐き出したことで、一気に雰囲気が変わりました。

 恋人のお通夜でもお葬式でも涙を見せなかった千草が、優樹の胸でだけは素直に泣くことができた。
 優樹はそれだけ、千草にとって安心できる存在であって、そんな人がそばにいることに安堵しながらも、優樹の心情を思うと切ないです。

拝読いたしました

葉月さん、こんにちは。

優樹君の、千草ちゃんへの「幼馴染みだから」という感情と「ずっと好きだったから」という感情が混ざり合ったものが見えてくる感じがすごく良いです。
幼馴染みって良いものですねぇ。
なんとなく、ゆっくりと時間が過ぎていく所を眺めていたい気持ちになりました。

「今はもうない星」拝読しました。

はじめまして。森崎緩と申します。
「今はもうない星」拝読しました。

すごく心に残る作品でした…!
冒頭の優樹くんの心の呟きが妙に切なげで、千草ちゃんのテンションと噛み合わないところを不思議に思ったのですが、そういうことでしたか…。
ここにはいない、もう会えない人を思い出す時に生じる熱量は、いつでも傍にいる人をはるかに凌ぐくらい強いんですね。千草ちゃんの中の達哉先輩の存在の大きさが手に取るようにわかって、読んでいて胸が痛くなりました。

千草ちゃんの辛さはすごくよくわかるけど、やっぱり優樹くんには報われて欲しいです。
こんなに優しくひたむきな人の存在を、千草ちゃんが悲しみから立ち直った時に気づいてくれたら、改めて見つめ直してくれたらと祈らずにはいられません。

読ませていただきました

こんにちは。紅月赤哉です。
読ませていただきました!

他の方々もおっしゃっていますが、短い中での優樹の想いを通して千草の内面も何となく透けて見えるというか。
誰にも見せなかった涙を見せられた優樹はとても信頼されているけど、きっとだからこそ踏み出せないのでしょうね。
既にない優樹と千草の星は、また新しく生まれていくんだろうと思います。

拝読致しました!

 他の皆さまの感想と被ってしまいますが、原稿用紙3枚という短さの中に、ストーリーも登場人物たちの心の内も全て凝縮されていることに驚きました。

 最初はするりと読み流していた冒頭部分、作品を読了してから読み返してみると、「お前の考えてることなんて、…」や、「だから俺も無理して、…」という文章の本当の意味が分かって、ぎゅっと胸が締め付けられました。
 二人が少しでも早く、「今もここにある星」を見つけられることを願います。

拝読いたしました

夏の満天の星の下、一瞬とも言える時の一コマ。
その一瞬が、僕(優樹)、千草、そして、亡き先輩達哉の、これまでの人生の関わり合い総てを、現している。
今はもうなくても見えている星とは逆に、今はないけれども、しっかりと消えることなく刻まれている思いがここに現存する。
とても切ないですが、確固とした御話、有難うございました。

そして、優樹と千草の二人には、新たな幸がありますように!

拝読いたしました。

親しい人しかも恋人の急な死はショックですよね。
最低1年は虚ろになるものですし、そんな彼女の肩に手を回すことは最低3年はできないものですから、まだ先は長いでしょう。肝心なのは慰めがどのようにくるかだと思います。

拝読いたしました。

葉月さん、はじめまして!

幼馴染もの。そして死別もの。もう少し年齢が上ならこの二つを合わせても「うんうん、時間が解決してくれるから頑張ろう」って思えるけど、高校生となると、ほんとにもう……。
達也先輩、なぜ亡くなってしまったのでしょう。
先輩とはいえそんなに年は変わらないと思うので(幼馴染も先輩って呼んでるから、多分一つとか二つとか上?)せめて、せめてその最期の瞬間に苦しみが少なかったことを祈らずにはいられません。
もう、闘病してたとかもしそうならほんとに悲しすぎる。お若いのに(完全に思考がおばさん)

そして、残された二人が何年後かには笑えていたらいいなぁ、と切に願います。
なかなか難しいと思うけど。それでも、いつかは星空を見ながら二人で笑いあえたらいいなぁ。

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