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影踏鬼 ~かげふみおに~ by 桐央琴巳

作:桐央琴巳 HP:言ノ葉化粧
分量:18枚  使用お題:暑さを凌ぐ、蝉時雨を聞く、蚊取り線香、肝試し、汗を拭う、二度目の水浴び、花火、溺死者、夜祭りに紛れる、向日葵、親戚の家、旱星、麦茶



 海には鳥居。山には積塔しゃくとう。神鬼棲まう島国の、内海にぽつりと浮かぶここは、誰が呼んだか影ヶ島。
 海は神のもの。山は鬼のもの。そしたらどこが人のもの?
 神から恵みの幸を得て、鬼から奪った森を拓いて、里にしたところが人のもの。

 うお釣り星に赤々と、旱星ひでりぼし輝く八月朔日。今日は離れ小島のこの村の、年に一度の影追い祭り。日暮れを告げて、どん、どん、ぱん。御山みやまの奥まで鳴り渡る、段雷に呼ばれて鬼が来る。
 ――今年最初の鬼は誰にしよ?
 去年の祭りはつまらなかった。死にたがりの大人じゃなくて、今年はだあれか子供がいいな。追いかけっこはできるけど、なあんにも知らない子供がいいな。
渡留わたるにいちゃん、渡留にいちゃん」
 寂れた空き家の隣の家から、甘えたな女の子の声がする。ちょいと覗いて見てみよう。
「見て見て、似合う? 渡留にいちゃん」
 赤い絞りの兵児帯へごおび締めて、金魚柄の浴衣を着て、髪を小さく結い上げてもらった八つばかりの女の子が、琉金りゅうきん泳ぐ両袖持って、おしゃまに首を傾けていた。
 蚊遣豚かやりぶたの目と口から、ゆうらり上る蚊取り線香のかそけき煙。かなかなというひぐらしの蝉時雨を聞きながら、麦茶片手に端居して、風死した夕凪の暑さを凌いでいた渡留は、そちらをちらりと流し見て、昨日やった夏休みの宿題で、覚えたばかりのことわざをぼそりと吐いた。
「馬子にも衣装」
「これっ、渡留、ちっちゃくても女の子はちゃあんと褒めたり! 朝香あさかちゃんこーんな可愛いやないの」
 母の手にべしり、とはたかれた渡の身体に、今まさに飲もうとしていた麦茶がばしゃり、と零れた。
「ちょっ、おかあ、何しよん!」
「ああ、悪い悪い」
「大丈夫? 渡留にいちゃん」
「あかん……、中までべしょべしょや」
 お茶も滴るいい男になった渡留は、立ち上がってしゅっと帯を解き、麻の葉柄の白い浴衣を脱ぎ捨てて、褌姿で庭に下り、手押し喞筒ポンプの井戸へと向かった。
 ――にいちゃん、にいちゃんて、馴れ馴れし。余所者が。
 ああそうや。そんなに渡留が好きならば、ずっとずうっとこの島におれるよう、余所者でなくしてやろう。
 本土の街から汽車と船とを乗り継いで、親戚の家に遊びに来てる、あの子にしよう。そうしよう。

 どん、どん、ぱらり。
 どん、ぱらら……。
 ずれた轟音響かせて、次々開く菊と牡丹。見えない月が昇る真夏の夜空に、儚い光の花々が咲く。
「ああもう花火、始まってしもた!!」
 麦茶でしとどに濡れた渡留は、あれから二度目の水浴びをして、露芝の浴衣に着替えていた。四つ離れた従妹の朝香を連れて、潮騒のする海沿いの道を行きながら、余計な時間を食ったせいで、夜祭りに出遅れてしまった渡留の気は急いている。
 渡留は右手に下げた提灯を、行く手にずいと突き出して、履き慣れない下駄にもたついている、朝香に向かって発破をかけた。
「急げ急げ、朝香。お祭り広場はもうすぐそこや!」
「待って、待って、渡留にいちゃん!」
 渡留の背中に遅れること数歩。懸命に追い縋る朝香の頭上に、黄色い芯に赤色の、丸い牡丹が花開く。にわかに明るくなった夜道に、朝香の影が黒々と落ちた。
「――影踏んだ」
 その声が脇から掛けられた途端に、渡留の後を追いたい朝香の両足は、ぴたりとその場に縫い止められてしまった。壊れたからくり人形の如くに、ぎこぎこぎこと首を動かして、朝香は声の主を振り返る。
「……だあれ?」
 知らない子。
 夏休みが始まってすぐ、この島へ遊びに来てから今日までに、朝香が会ったことのない女の子。
 渡留と同い年位に見える、硝子玉みたいな目をした綺麗な子??。
「なあに?」
 その子が、にい、と笑うと、吊り上がった口の端が耳の下まで裂けた。
「次は、あんたが、鬼」
「きゃあああっ!!」
 朝香は叫んで思わずしゃがんだ。目を閉じてがちがち震えていると、渡留が飛んで戻って来た。
「何や朝香、どないした!?」
「渡留にいちゃん、お化けっ……! お口のお化けが出た!」
「お化け?」
「うん。お化けが朝香の『影踏んだ』って、朝香走れなくなって、それで……」
 そろそろと開けた目で、しゃがみこんだ自分の足元を見て、朝香はもう一度、気がふれたように悲鳴を上げた。
「渡留にいちゃん、朝香の、影が無いよう!!」
「……なんやて?」
 提灯をかざして朝香を照らし、渡留はそれを食い入るように確かめてから、自分の身体も光の中に入れ、怖い顔をしたまま朝香に言った。
「踏め」
「何を?」
「俺の影や、何でもいいからとにかく踏め!」
 渡留に引っ張り上げてもらった朝香が、恐る恐る伸ばした片足でちょんと渡留の影を踏むと、それは生き物のようにぞろりと這って朝香の足元にへばりついた。
 その足に履いた下駄をからころさせ、ぶんぶんと両手を振ってみると、影は何事も無かったかのように、朝香とぴったり同じ動きをした。
「くっついた……」
 ほっとしたのも束の間のこと。たいへんなことに朝香は気付く。朝香が取ってしまったせいで、今度は渡留の影が無い。

「影踏鬼や……」
 二人並んだ足元に、並ばない一人ぼっちの影。あるはずのものが無い地面を眺めながら、渡留がぽつりと漏らした言の葉を、朝香はこわごわ繰り返した。
「かげ、ふみ、おに?」
「そや。影踏鬼。影追い祭りの夜に、出るんや、鬼が。影追い祭りいうんはな、御山の鬼と影踏みして遊ぶ、悪鬼祓いのお祭りなんや。年に一回遊んでやらんと、鬼はひでりにしたり、不漁にしたり、疫病を流したり、色々悪さしよるから」
「鬼と遊ぶ……? 遊んであげるだけでいいの? 影踏鬼に鬼にされたらどうなるの?」
「大人は死ぬ。子供は御山に連れて行かれる。去年は万屋よろずやのじいちゃんが、溺死者になって見つかったし、一昨年は千夏ちなつが――」
「できししゃって?」
「溺れた人の死体のことや。溜め池に浮かんで死んどったんや」
「ちなつちゃん、て?」
「千夏、は――」
 渡留はぎゅっと、切なそうに眉を寄せた。朝香の胸まで、つんと痛くなるような面容だった。
「……隣の子。俺より一個上の、隣の家に住んでた女の子。一昨年の影追い祭りの夜におらんくなった」
「じゃあ、今年は朝香が連れて行かれるの?」
「そんなん、させへん!」
 きっぱりとそう言い切って、渡留は腰をかがめ、怯える朝香と瞳を合わせた。
「今は影の無い俺が鬼や。朝香はもう、鬼やないから安心しぃ」
「嫌っ!」
 頼もしく笑ってくれる渡留の袖を、朝香はぶんぶんと首を横に振って引っ張った。
「渡留にいちゃんが、いなくなるのも嫌だよう!」
 ぐずる朝香を勇気づけるように、渡留は朝香の頭をぽんぽんと叩いた。
「俺かて連れて行かれとうない。ええか朝香、よう聞き。みんなで助かる方法はある。花火の終わりが祭りの終わりや。その時に、影踏鬼を鬼にして、御山に還ってもろたらええんや」
「鬼をまた鬼にするの……?」
「そや。けど、影踏鬼は影踏鬼やてなかなか人にはわからへん。十人しかおらんはずの所に十一人おっても、なんや全員知ってる気ぃして、誰が影踏鬼やかわからんのや。ただ、影踏鬼に影を踏まれた人間と、その時そいつに触れてた人間だけが、そこに片足だけでも付けてる間だけ、鬼が本当の鬼やてわかる。なあ朝香、まだ覚えてるか? 影踏鬼はどんな奴やった?」
 そう言われてみれば、あれから朝香が動かしたのは、渡留の影を踏んだ側の片足だけだった。先ほど見た鬼の顔を思い起こして、朝香はぶるりと身震いをした。
「うんとね……、ぱっと見とっても可愛いけど、お口がこーんなとこまで開く怖いおねえちゃん」
 両手で両耳の下を指差して、一生懸命朝香は伝えた。
「おねえちゃん? 女なんか?」
「うん、渡留にいちゃんぐらいのおねえちゃん。髪の毛おさげにしてて、向日葵の浴衣を着てて、黄色い帯くくってた」
「……嘘やろ?」
 それだけの朝香の説明から、すんなりと連想されてしまった鬼の姿に、渡留は青ざめ息を詰めた。その否定の理由は知らず、朝香は唇を尖らせる。
「朝香嘘なんてついてないもん」
「それはわかってる。けど……嘘や」
 信じたくないことは嘘――。得体の知れない影踏鬼の予想図を、渡留はそんなはずはないと打ち消して、吹き出た嫌な汗を拭い、空いている左手で、朝香の右手をぐいと掴んだ。
「朝香、こっからは手ぇ繋いで行こ。俺に影踏まれてしもたら、すぐに俺の影踏み返すんやで。さっきは一人で先、先行って、怖い思いさしてごめんな」
「ううん」
 汗ばんだ渡留の大きな手を、朝香は強く握り返した。『渡留にいちゃん』と一緒なら、暗い夜道も影踏鬼も、怖いけど、怖くない――。

 遠くに聞こえていた祭り囃子が、いつしか波の音を上回り、はっきりと耳に届くようになっていた。人気の無かった夜の先に、太鼓の乗った祭り櫓と、吊り下げられた提灯と、その下に集う村人たちの人波が見えてくる。
「あっついのー」
 お祭り広場手前の四つ辻で、渡留と朝香はお調子者の銀児ぎんじとかち合った。しっかりと手を繋ぎ合った二人の姿に、にやにやしながら銀児はぴゅうと高い口笛を吹く。
「千夏の次は従妹の子ぉか。渡留はまたまた女とあっちっちやのう。千夏が御山で妬いとるぞー」
「あほ抜かせ、銀児。そんなやない。影踏鬼が出たんや。朝香みたいなちっちゃい子、はぐれたさしたら危ないやろ」
「影踏鬼て――うおっ、今の鬼お前か! 渡留!」
 銀児は興奮しきりにそれを確かめると、己が提灯を使って、渡留の足元に影を伸ばした。
 渡留の意図せぬことであったが、踏まれたことになった銀児の影は、踏んだ渡留の影となる。
「ひゃあー、俺の影ほんまにのうなったぞ! なんや身体が軽なった気ぃするなあ!」
「なにしよんねん銀児!」
「なにて、これで権太ごんたの影、踏みに行くんや。あいついっつも、腕力に物言わせて威張りくさっとうくせに、お化けとかは全然あかんびびりやからなあ」
 鬼になった銀児はにひひと笑って、朝香の手に提灯を押し付けて、ひょいと身軽に蜻蛉を切ってから、お祭り広場に向かって駆け出した。
「ちょっ、待て! 銀児! いきなり権太なんか鬼にしたら、大騒ぎになるやないか!」
 慌てる渡留を振り返り、銀児は高く拳を突き上げて、大音声だいおんじょうで主張した。
「あほかあ、渡留! 出たぞて騒いで、追いかけ合って、ぎゃーぎゃー叫んで影踏みせんと、影踏鬼が交じりに来れんやないか! これからみんなで、度胸試しの肝試しぃや。ぼさっとしてんでお前らも早よ来いや!」
 ほれほれ鬼が来たぞーと、蜘蛛の子を散らしながら銀児は、一足早く人いきれのする夜祭りに紛れていく。しばらくすると、銀児の標的通りに次の鬼にされたらしい権太の、強面の餓鬼大将にはそぐわない、恐怖に竦む金切り声が轟いた。

 おんおんと泣きながら子供らを追い掛ける、影の無い権太を尻目にして、渡留と朝香はお祭り広場に提灯を飾る。
 そうして影踏みが始まったお祭り広場は、阿鼻叫喚の地獄絵図、かと思いきや――。
 賑々しい祭り囃子に煽られる中、時にラムネや蜜柑水を飲み、焼きとうもろこしやいか焼きを齧り、射的を打ち、ヨーヨーを釣り、打ち上げ花火を見上げて、替わりばんこに休みもってする命懸けの影踏みを、村の子供たちの多くは、戦慄しながら面白がっていた。
 時間制限あり、最後の鬼になってしまえば万事休すという緊張感に、その仲間に入れてもらった朝香の背中も、ずっと泡立ちぞくぞくとしている。それがふとした瞬間に快楽けらくにすり替わる――。何と狂おしい祭りなのだろう?
 終了間際は恨みっこ無しになるように、全員物陰から飛び出して影踏みだ。人に紛れた鬼の子に手招きされて、童心に戻った大人たちも夢中になって遊んでいる。これだけ大勢の人たちに、本気で遊んでもらえれば、鬼だってきっと本望だろう。

 どどどどん。
 夜空いっぱいに広がる大玉花火。
 辺り一面を昼のように明るくして、真っ白眩しい柳が幾重にも垂れる。
 祭りの終わりを告げる連続花火に、人々の影はこの夜一番濃くなった。
「??影踏んだ」
 手を引いてくれる渡留の隣で、取ってもらった赤いヨーヨー風船を大事に持ちながら、呆けてそれに見惚れていた朝香は、影踏鬼が自分の真後ろに忍び寄っていたことに、まるで気付いていなかった。
「今年は、あんたが、贄――」
 あの時と同じ声で、少し違った言葉をかけられて、再びその場に縫い止められた朝香の目前は、絶望で真っ暗になった。
「やっ……!!」
「ふざけんなやっ!!」
 朝香を自分の影に入れて、それを朝香に張り付けて、渡留は影踏鬼の影を踏み締めた。
 その足元に、寂しく弱まりゆくしだれ柳の光に合わせて、徐々に薄れる影踏鬼の影が移る。
「影踏鬼! 今年最後の鬼はお前や! 千夏の姿で、千夏の声でっ、朝香まで御山に連れてくなっ!!」
「なら、渡留が一緒に来てくれるぅ?」
 心蕩かすような鬼のいざないに、朝香の手をしっかりと掴んでいた、渡の指の力が不意に緩んだ。
「千夏……なんか……?」
「駄目!! 渡留にいちゃん!!」
 必死の思いで朝香は、渡留の胴に抱き付き顔を埋める。その温もりに引き止められ、左手で朝香を抱き返しながらも、半泣き顔になった渡留は影踏鬼に右手を伸ばした。
「あほやなあ、渡留」
 宵闇に透けてゆきながら、震える渡留の小指に冷たい小指を絡め合わせて、いなくなった時のままの、千夏の顔した影踏鬼が、草深百合の花笑みをする。
「千夏やけど、千夏やないんよ、もう……。来年も遊ぼね、渡留……」
 花火の。
 最後の一欠けらが消えると共に、指切りを切った影踏鬼も跡形なく消失した。影踏鬼は次の鬼を掴まえられぬまま、御山の深くに還ったのだ。
「千夏っ……!」
 人でないものの冷たさが、ひんやりと残る右手を握り締め、朝香の小さな身体に縋りながら、渡留はおいおいと泣き崩れた。よろめきそうになりながら、朝香は懸命に踏み止まった。自分が動いてしまえば、記憶から抜け落ちてしまう儚い約束と微笑みを、せめて涙枯れるまで、渡留が覚えていられるように。
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Comments for this article...

拝読しました。

文章の言葉選びがとても洗練されていますね。言い回しや描写が独特なのにとても綺麗。艶を感じるものがありました。
祭りの裏に隠された恐ろしい遊び、じわりじわりと忍び寄る恐怖と背中合わせの快感に手に汗を握りつつ、文章を追いかけていました。
影踏鬼という存在が本当に意地悪いなと、思いつつ。最後は切なくて寂しくて。
波留くんと千夏ちゃんの幼馴染関係のお話も読んでみたいなと思いました。

読ませていただきました

紅月赤哉です。読ませていただきました。

最初の逃れられない死っぽいイメージから徐々に変わっていく感じが、日頃読まない感じの文章のテンポと相まってとても不思議な感覚でした。

結局、鬼もただ命を奪う愉快犯じゃなくて、祭りの日にはしゃぎたいだけなんだろうなと。無邪気な悪意、みたいな。

千夏ではない千夏と別れた渡留の気持ちは辛いですね。
一昨年にいきなり別れさせられたのに、今回ではっきりと別れを経験してしまったのが。

朝香ちゃんの小さな手が、少しでも渡留を支えられますように。

「影踏鬼 ~かげふみおに~」拝読しました。

ご無沙汰しております、森崎です。
またこうして桐央さんと企画でご一緒できて、うれしいです!

実は昨晩このお話を読み始めたのですが、結構怖くて、こうして朝になるまで待ってようやく読み返せたという次第です…(笑)
特に冒頭の鬼視点がすごく怖い! それでいて色気というか妖しい美しさがあって、怖いのに読みたい、でも怖い…みたいな、お化け屋敷を覗くような気分になりました。
ちょうど影踏鬼を楽しむ子供の気分みたいですね。

影踏鬼の怖さは理不尽だなあと思う反面、人の力ではどうしても抗えない災いがあるのも事実です。その結果、渡留くんから奪われたものが切ない…。
渡留くんも朝香ちゃんもいつかは大人になるでしょうし、そうしたら影踏鬼をもっと現実的な災いとして捉えるようになるのでしょうね。
その時、千夏ちゃんじゃなくなった千夏ちゃんはどう思うのか…先のことを考えるとますます切なくて、忘れられないお話になりそうです。

拝読いたしました

 桐央さん、こんにちは。
 作品拝読させていただきました。

 冒頭の鬼視点は、軽やかなテンポなのに重いというか、じわじわとくるものがあります。
 最後まで読み終えて、もう一度読み返すと、より怖いです。
 影踏鬼が今年最初の鬼を決める時、まず、元は自宅であった空家の近くの声に着目したことや、「にいちゃん、にいちゃんて、馴れ馴れし」という台詞に、鬼にとられた千夏の心が見て取れます。

 祭りの様子と影踏みの様子が軽やかなのに、命がけのおにごっこが展開されるのは、まさに鬼気迫るものを感じました。
 最後は、鬼がただただ怖い、憎い存在だけでなく、千夏の悲しい心を見せたことによって、祭りの後の余韻のような終わり方だと思いました。

 できればこの先、このような恐ろしい遊びがなくなりますように、と願わずにはいられません。

拝読いたしました

桐央さん、こんにちは。

影踏鬼という土地の怪異についつい惹かれてしまいました。
なんだかわからないけれど、ずっと続いている。前回連れて行かれた千夏ちゃんの姿で渡留君の前に現れる。
もしかしたら、別の人にはその人の親しかった人の姿を見せているのかも知れないなぁなんて考えていたのですが、当人からすれば恐ろしい話ですね。
私なら、ついついついて行ってしまいそうだと思ってしまいましたw

拝読致しました!

 まるでわらべ歌のようなリズミカルな冒頭の語りで、いきなり世界に引き込まれました。全編を通して美しい日本語たちがふんだんに散りばめられており、作者様の筆力と語彙の豊富さに脱帽です。

 一見無邪気な、けれど命がけの祭に、島の人々が当然のように参加していることに、ぞくりと寒気を覚えます。冒頭にあるように、人々は鬼から森を奪って里をつくったから、その後ろめたさと鬼への恐怖から、この祭りを先祖代々大事に催し続けてきたのでしょうか。

 「鬼が本当の鬼だと分かる」ための条件が、最後の最後にこんな形で効いてくるとは……恐怖の所為ではなく、鳥肌が立ちました。

拝読しました!

ごく普通にありそうな夏の風景から、
どん、どん、ぱらり と短いオノマトペとともに、すっと幻想的な祭りの世界に引き込まれました。

子供たちが遊んでいるようで、その怖~い正体が姿を見せてくるところ。
その状況でも、やんやと遊んでしまう子供たちが妙にリアルで魅力的です。

ラストのお別れのシーンが、ちょっと怖くて、なんとも切ない――
でも、小さい頃、本当にこんなお祭りに自分が居たのじゃないか、
なんて、朧げな思い出の一部とすっと一体化させてみたりしました。

文章のテンポも良くて、一気に最後まで読め、楽しめました。

拝読いたしました

とても拍子が良く、調が美しい文章ですねv
読み始めから、鼓、大革、太鼓、笛の音が、脳裏に響き、鬼女の急ノ舞を観ているような心地で、読ませて頂きました。
最後はあまりに切なくて、響き渡る締の笛の音が終わっても、なおも余韻が残り続け、沈黙のままじっと舞台を見続けているような気分となりました。

素敵な御作品、有難うございました。

わらべ歌に隠された怖さ、みたいな

わらべ歌を連想させる地文が、物語の世界観を表しつつ、その中の無邪気な怖さを醸しているようでした。
また、訛りのある台詞が、地域の独特な祭りのルールを違和感なく受け入れさせてくれました。

千夏との別れが切ない!(涙)
鬼になった千夏の諦めた感じもまた、胸にきます。誰かを恨むことなく、寂しく次の祭りを待つ姿を想像してしまいました。

余談ですが、名前の「渡留」。最後に現世に留まることを示唆しているのでしょうか。
うちの「健留」と似た名前に、名付けの由来に興味が湧きました(笑)

拝読いたしました。

桐央さん、お久しぶりです!

一度拝読させていただいた時にTwitterで「上質のホラー」と呟かせていただいたんですが、今回再読するとホラーなんだけどそれだけじゃない儚い美しさをすごく感じました。
ぞくりとする美しさ。怖いんだけど、それだけじゃないんですよね(語彙の少なさにジタバタ)
前半の鬼の目線で進む一人称。韻を踏んだ文章。本当に素晴らしいです。
鬼の正体がまさかのあの子で、それを知った渡留が揺れ動くさま、それを止める朝香。
クライマックスの場面には思わず手に汗を握りました。

でもって怖かったのがもう一つ。
命を懸けた影踏みを村の民全員が楽しんでいたこと。これはもうほんとに怖い。集団心理なんだろうけど、最後負けたら命をとられることがわかっているのに楽しめるという精神状態……ある意味ホラーですよね。
確かに、これだけ本気で遊んでもらえるから鬼は毎年村まで降りてくるんだろうなぁ。

まるでお伽噺のような美しいお話、ありがとうございました。

文体も物語も美しくて……

 読み始めて最初に感じとったのは、語彙の美しさと、それを支える文体のリズムでした。
 読み進めるにつれて、朝香の素直さや、渡留の正義感、「鬼」の切なさが浮かび上がってきて、ラスト、誰が鬼で終わるのかと、どきどきしました。
 他の方も書いていらっしゃいましたが、村人たちが本気で遊んでしまう集団心理、この祭りが(死にたい者が自分の影を踏ませてやる以外に、対抗策もなく)続いてきたこと自体の異様さを考えると、美しいだけでなく、ぞくりと残酷な話なのだと思います。
「年に一回遊んでやらんと、鬼は旱にしたり、不漁にしたり、疫病を流したり」と渡留は言いますが。もしかしたら、鬼がいるせいで、他の地より天災から守られているのかもしれないな、と、思いました。
 ラスト、千夏は鬼のまま帰って行きますが。これからいつか鬼が他の子供にかわるまで、毎年、渡留はこの鬼を祭りに迎え続けるのですね……。

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